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国内PSストアがついにIARC審査を導入したとの返答
AUTOMATONの取材より発覚
ゲームメディアAUTOMATONがSIEに取材を行った記事。
ソニー側から「国内PSストアも3月9日からIARC汎用レーティングを導入した」と返答があったことを明らかにしました。
今まで国内PS市場においてはCERO1のみが審査を担っていました。
プレイ対象年齢の制定やコンテンツアイコンの区分けも同団体が行っていたわけです。
それが、海外の審査団体IARCのレーティングでも販売可能になったということ。
競合他社である任天堂とマイクロソフトは既にIARC汎用レーティングを採用していました。
Google Playストアにあるアプリも全てIARCを通してリリースされています。
もちろん北米PSストアも導入済みであり、むしろ国内PSストアだけが特殊だったということになります。
審査団体を選べるようになって一体何が変わるのか。
いろいろな可能性を挙げていきたいと思います。
そもそもIARCとは何か
国際年齢評価連合(the International Age Rating Coalition)のことです。
アメリカはESRB、ヨーロッパはPEGI、ドイツならばUSKと各国ごとに審査団体が分かれていますが、いちいち調べて申請するのは非常に手間がかかります。
アンケート提出があったり判定員がプレイしたりと、団体によって審査システムも規制内容も違うからです。
特にドイツは対象年齢に対して法的拘束力があり、非常に審査が厳しいことでも有名ですね。
そこで、1回アンケートを提出すれば加盟団体全ての審査を機械的に受けられるというのがこのIARCになります。
審査も簡単、審査料も無料、オンライン審査もOK。
弱小ディベロッパーにとっては非常に優しい仕組みとなっていますね。
IARC参加団体はACB(濠)、DJCTQ(伯)、ESRB(北米)、PEGI(欧州)、USK(独)の5つ。
つまり1回の審査で5地域のお墨付きがもらえるということにもなるわけです。
日本は事情が異なる
日本のCEROはIARCに参加していません。
そもそも日本と海外では文化が違うので、倫理の感覚もそれぞれ異なるという点が挙げられます。
IARCに加入したことで海外の統一基準が適用され、日本市場で問題のない部分が引っかかるという一面もあるわけですね。
例えばよくゲーム内のミニゲーム(スロットマシンなど)がギャンブルとして槍玉に挙げられますが、国内であれに目くじらを立てる人は少ないでしょう。
今回みたいに国内ではCEROかIARCを選択できる方式が一番いいのではないでしょうか。
パッケージは審査対象外
IARCはデジタル作品のみが審査の対象となります。
つまりパッケージとダウンロード版が併売されているようなソフトはNG。
審査を簡略化できるのはデジタル販売専用の作品だけです。
ダウンロード版が好調でいずれパッケージ化を考えるなら、CEROの審査も視野に入れる必要があるというわけですね。
IARCレーティングのメリットって何?
審査期間が大幅に短くなる
CEROは外部審査員が事務所に訪問する必要があり、またプレイ動画をDVDに焼いておくるなど審査にプロセスを踏む必要がありました。
そしてようやくコロナでオンラインでの資料提出が認められたという経緯があります。
対してIARCはネットで簡単な質問に答えるのみ。
審査料金が無料につき、発売タイトルが増える
CEROの現況は分かりませんが、2020年の時点では1タイトルにつき審査料20万円を払う必要がありました。
(参照:『DEAD OR SCHOOL開発者 怒りの作業報告【YouTube】』)
個人でやりくりしているようなメーカーにとってはかなりの出費となります。
正確にはCEROに入会するために20万と年会費10万円が必要。
以上の金額を払うとCERO会員として認められてゲーム1本7万円で審査。
非会員は1本20万円ものお金が必要になるわけです。
対してIARCの審査費用は無料。
審査料の回収を考えなくてもよくなります。
CEROの審査が面倒だったり料金を負担に感じていたメーカーは他社に作品をリリースしていました。
これからはプレイステーション側でも同じ作品が出ることになりそうです。
北米ストアと変わらない値段のゲームが出てくる可能性も出てきますね。
DLソフトは全部IARCでいいじゃん。何か問題あるの?
年齢制限がきつくなる可能性もある
『ダンジョンに捧ぐ墓標』という作品はCEROだと12歳以上推奨、IARCだと16歳以上の年齢区分となりました。
どの部分が引っかかったのか把握できませんでしたが、このように審査団体によって年齢制限が上下する可能性があります。
文化の違いがレーティングに反映されるという一例も。
FF14にポーカーを実装しようとしたら、海外ではギャンブルとみなされるので現在の対象年齢を引き上げることになってしまう。
やむなく麻雀に変更したという逸話がありました。
日本人の感覚だと麻雀の方が身近な賭け事に見えるので、何とも面白い改変だというお話。
もちろん逆のパターンもあって、不謹慎なネタが多い『Nine Witches: 家族騒動』はCERO15歳以上、IARC12歳以上という違いが出ました。
ただ、これらの作品も18歳未満禁止でなければ売り上げに影響は出ないかもしれません。
ク○ゲーが増える可能性が非常に高い
ゲームを販売するハードルが下がったことにより、無名のメーカーが作った良ゲーが評価される土壌も整いました。
ただ、それ以上に一攫千金を狙っただけの粗悪な駄作が増える可能性も高い。
北米のPSストアを見たことがある人なら分かると思いますが、酔っぱらいが一晩で作ったの?というようなゲームがザラに置いてあります。
フリー素材をそのまま使っただけというゲームもありました。
開発エンジン付属のサンプルソースを少し変えて出しただけ、というような作品もあります。
CEROを通じての参入障壁の高さが、ク○ゲー防波堤の役割を果たしていた部分もあるでしょう。
現在、国内Nintendo Switchのeショップは荒れ気味となっています。
多いときは1週で40本以上のソフトがリリースされ、ろくにローカライズもせずに英語版しかないようなゲームも多いです。
せっかくの良ゲーが埋もれてしまう可能性もある。
毎年No.1ク○ゲーを決定することでお馴染みのKOTYスレは、IARC審査のゲームを選考対象外としました。
あまりにも酷いクォリティのソフトが多すぎるからです。
CEROは社会的に認められているという強みがある
CEROは行政や地方と連携を取り、政府の公聴会に何度も出席し、現状のゲーム業界の説明に努めてきました。
信頼のおける審査機関として今まで立ち振る舞っていたわけです。
2015年には元神奈川県知事である松沢成文氏が「ゲームの規制強化が必要!」と国会に意見を提出しました。
当時の内閣府副大臣は「気持ちは分かるが、国民のコンセンサス(合意)も必要。CEROに任せている」(意訳)との回答を出しています。
表現の修正が明らかになるたびにCEROは叩かれますが、なければないでもっとゲーム規制が進んでいたことでしょう。
うるさ型に対して「ゲーム業界は健全」と表明する団体も必要というわけです。
大手メーカーはCERO審査のままかもしれない
大手メーカーはブランド力を保つため、ダウンロード専用ソフトであってもCEROに審査を委託し続けるかもしれません。
例えばSwitchがIARC審査を認可したあとも、任天堂自体がリリースするソフトは全てCEROを通し続けています。
審査料を払える企業はCERO、インディー系や中小企業はIARCという流れも十分ありえそうですね。
18歳以上対象ソフトは引き続きCEROが審査を担当
「これでダウンロードソフトは北米と同じ表現レベルとなる」と思った人には少し残念なお知らせ。
18歳以上のユーザーが対象となりそうなソフトは引き続きCEROが審査を担当するそうです。
海外の血だらけホラーゲームがそのまま出せるというわけでありません。
今は少し自由となったデジタル作品の販売を喜びましょう、ということで。
あとがき
ゲームを出すハードルが下がったのなら、とりあえずPS4/PS5のラインナップが増えるということで期待したいですね。
IARC審査第1号の作品は果たして何となるのか。
「日本向けPS4版の『古き良き時代の龍后伝』『古き良き時代の冒険譚 Ne+ 』が配信できるようになりました! ありがとうIARCレーティング!」
こんなつぶやきも見つけたんで小規模なとこにはやっぱり審査料はかなりネックだったみたいですね
>とろちゅうさん
明言するメーカーがいるのは面白いですね
やっぱり負担だったんだな…と
500円以下のタイトルで頑張ってるようなところは採算取れてるのか余計な心配してましたが、これでそんなこと考えないで楽しめそうです