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CEROとIARC、審査機関の違いって何?【トロフィー視点】

Dragon Audit

※『Dragon Audit』販売から数日が経過しました

※ 結局、IARC版Dragon Auditはストアから削除されてしまいました。その代わりに審査元を伏せたDeluxe Editionが販売開始となっています。

今更な話。

2021年5月時点では『Dragon Audit』というソフトが普通に販売を行っています。

ゲームの内容についてはあまり評判がよくないみたいなのですが、今回取り上げる問題はそこではなく。

タイトル画像下の「IARC12+」というレーティングのマークです。

国内審査機関のCEROではなく、国際評価連合のIARCになっているというところ。

[blogcard url=”https://automaton-media.com/articles/newsjp/20200709-129997/”]

前回は「CERO以外のレーティングマークがある!」と大騒ぎになったのですが、今回はついにSIEからIARC汎用レーティングのソフト販売の認可が下りたのでしょうか。

IARC汎用レーティングとは?

国際年齢評価連合(the International Age Rating Coalition)の評価マークのことです。

アメリカはESRB、ヨーロッパはPEGI、ドイツならばUSKと各国ごとに審査団体が分かれていますが、いちいち調べて申請するのは非常に手間がかかります。

アンケート提出があったり判定員がプレイしたりと、団体によって審査システムも規制内容も違うからです。

特にドイツは対象年齢に対して法的拘束力があり、非常に審査が厳しいことでも有名ですね。

そこで、1回アンケートを提出すれば加盟団体全ての審査を機械的に受けられるというのがこのIARCになります。

審査も簡単、審査料も無料、オンライン審査もOK。

弱小、独立系ディベロッパーには非常に優しい仕組みとなっていますね。

IARC参加団体はACB(濠)、DJCTQ(伯)、ESRB(北米)、PEGI(欧州)、USK(独)の5つ。

日本のCEROは参加していません。

 

パッケージは審査対象外

IARCはデジタル作品のみが審査の対象となります。

つまりパッケージとDL版が併売されているソフトはNG。

審査を簡素化できるのはダウンロード販売専用の作品だけです。

 

日本の審査団体ってどうなん?

CERO発足

日本国内でゲームを発売する場合、2002年12月以降はCERO(コンピュータエンターテインメントレーティング機構)を通さなければショップに並べることができなくなりました。

一応任意ではありますが、CEROを通さないと流通や問屋に拒否されるので審査はほぼ必須でしょう。

ゲーム機のグラフィックが向上するということは、流血や殺人の表現もリアルになっていきます。

残虐なゲームに対して世の中の批判が強まる前に「ゲーム業界も自主規制に取り組んでいる」という姿勢を見せる必要がありました。

GTA3とZ区分

そして業界が自主規制のルールを整えたのにも関わらず、ほどなくして神奈川県知事の松沢成文氏がGTA3を有害図書に指定。

ゲーム規制の動きが全国に広まりかけることとなり、行政の介入を許す事態となってしまいました。

対して当時CEROは「GTA3は有害図書にあたらない」との判断を下しています。

この事件をきっかけに、更に年齢制限を強めた「Z区分(18歳未満禁止)」を新設。

各地方の自治体にもビデオゲームの審査団体があるということが浸透し、内閣府が開催する公聴会にも積極的に顔を出すようになりました。

松沢成文氏は2015年にも改めて国会で「有害ゲームを規制したい」と発言して周りから一定の理解を得ていますが、一方で「CEROにまかせる」「表現の自由もある」「国民のコンセンサス(合意)が必要」とも返されています。

行政と連携を取っているCEROを無視して、当時のようにいきなり規制に走るというのは難しい状況にあるでしょう。

ただ、罰則のない香川条例のようなものは今後もあるかもしれません。

ユーザーから見た問題

レーティングシステムを導入したからといって、ゲームが元の表現でそのまま遊べるというわけではありません。

たとえZ区分18歳未満禁止にしても表現の修正を施される場合も多く、それがゲーマーから批判の的となっています。

例えば『バイオハザードRE:2』はゾンビがしぶとく調整されており、死体が消えない仕様となりました。

つまり、そこを通るたびに死体がいつ起き上がってくるのか分からない恐怖があるわけです。

しかし、頭を吹っ飛ばすと完全に起き上がらなくなる。

ゲームの表現とゲーム性が一体化しているわけです。

日本版は頭が血だらけになるぐらいが限界でした。

バイオシリーズは2週目からタイムアタックに挑むという楽しみ方ができるゲームです。

完全に沈黙させた状態を一目で確認できないということは、操作にわずかな迷いが生まれて記録に支障が生じます。

ヘビーゲーマーほど怒りの度合いも高いのではないでしょうか。

Xbox Game Passのサービス開始が3年も遅れる

[blogcard url=”https://game.watch.impress.co.jp/docs/kikaku/1245664.html”]

Xbox Game Passは本国から3年遅れてのサービス開始となりましたが、その裏ではCEROとレーティングについて話し合いがありました。

結局、中高生がお小遣いやバイト代で加入するということについては断念。

対象年齢を18歳以上と限定することによって、本国とほぼ同じコンテンツを提供するというところに着地しました。

CEROが悪いの?

たしかに「アンティルドーン(暗転ドーン)事件」や「レーティングのバラつき」と合わせ、ゲーマーからCEROへの印象はあまり良くないというのが現状です。

海外のゲームが日本で発売するためにはCEROに合わせる必要がありますが、それには審査基準に適合するようにゲーム内のCGを差し替える必要があります。

当然、別のグラフィックをデザインする必要があり別のバグも発生します。

宣伝費、ローカライズ費用に加えてデバッグ代も上乗せされるわけです。

日本市場での利益を考えて発売しない、という選択肢を取る海外メーカーも少なくありません。

パブリッシャー側も近年はこうした事情を踏まえて「日本版も海外版も同じ内容です!」と宣伝するか、公式サイトにて「海外版との表現の違い」を明記するケースが多くなりました。

ちなみに「CEROが悪い」と発表したら、そもそも相談すらしていなかったUbisoftの方が悪いという『アサシンクリードヴァルハラ』のような事例もあります。

CEROは審査料で儲けてる?

ESRB(北米)は開発費にもよりますが、2018年の段階では審査料4000ドル(約43万円)を徴収していました。

CEROの20万円も特別高いというわけではないでしょう。

加えて収支も全て公開されており、純利益は1億円にも満たなかったのでさほど儲けているという印象はありません。

ただ、ESRBは低予算ゲームに対して融通が利くということ、またデジタル作品は審査料が無料であるIARCへの移行を推奨しているという点が挙げられます。

インディー開発者を助ける仕組みを柔軟に導入しているわけですが、日本は昔のままであるというところに問題があるでしょう。

コロナ禍での審査団体の対応

[blogcard url=”https://www.gamebusiness.jp/article/2020/04/13/16988.html”]

北米のESRB、欧州のPEGIはオンライン審査の仕組みが整っているのでコロナの影響はさほどありませんでした。

対して日本のCEROは約一ヶ月もの間、審査を停止しています。

ゲームの発売スケジュールに影響を及ぼすという事態が発生しました。

これも大きな批判ポイントのひとつ。

 

IARCレーティングのメリットって何?

審査期間が大幅に短くなる

CEROは外部審査員が事務所に訪問する必要があり、またプレイ動画をDVDに焼いておくるなど審査にプロセスを踏む必要がありました。

そしてようやくコロナでオンラインでの資料提出が認められたという経緯があります。

対してIARCはオンラインで簡単な質問に答えるのみ。

審査料金が無料につき、発売タイトルが多くなる

マイクロソフトや任天堂が大量にインディータイトルを発売できる理由のひとつがこれ。

審査料20万円を払う必要がないので、参入障壁がぐっと下がります。

トロファー向けの作品もたくさん出ることでしょう。

北米と変わらない値段のソフトも出てくる可能性が上がります。

 

DLソフトは全部IARCでいいじゃん。何か問題あるの?

国内の販売年齢制限がきつくなる可能性もある

4月23日発売の『ダンジョンに捧ぐ墓標』はCEROだと12歳以上推奨、IARCだと16歳以上の年齢区分となりました。

このように認識の違いが年齢制限に引っかかる可能性があります。

FF14のゴールドソーサーにポーカーを実装しようとしたら、ギャンブルとみなされるので麻雀に変更したという逸話があります。

日本人の感覚だと麻雀の方がより賭け事に見えるという話。

もちろん年齢制限には逆もあって不謹慎なネタが多い『Nine Witches: 家族騒動』はCERO15歳以上、IARC12歳以上という違いが出ました。

まぁ、18歳未満禁止でなければ売上に影響はないのかもしれません。

 

クソゲーが増えるかもしれない

北米のPSストアを見たことがある人なら分かると思いますが、酔っぱらいが一晩で作ったの?というようなゲームがザラに置いてあります。

参入障壁の高さがいたずらのようなゲームのリリースを防止する役目も果たしている部分はあるでしょう。

もちろん審査団体がゲームの品質をチェックするわけではありませんが…。

 

あとがき

去年IARCレーティングで取り下げられたダンスファイター(Dance Collider)も復活してません。

今回の配信は例外でしょう。

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