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犬と戦車のRPG『メタルマックス ワイルドウエスト』の開発中止が決定
6月9日午後8時、メタルマックスの公式アカウントよりシリーズ最新作『メタルマックス ワイルドウエスト』の開発中止が決定したことがアナウンスされました。
理由は「現在の開発状況等を勘案した結果」ということだそうです。
発売延期じゃなくて中止…。
他社のメタルサーガも、外伝のメタルドッグも全部買ってたのにそんな…。
ということでメタルマックスシリーズの歴史を振り返ってみたいと思います。
「竜退治はもう飽きた」アンチドラクエとして産声をあげたRPG
メタルマックスとは、刺激的なキャッチコピーを掲げて誕生したコマンド制RPGです。
生みの親はドラクエのロト3部作に関わったことでもおなじみの宮岡寛氏。
通称”ミヤ王”です。
従来のRPGとは差別化を図るために
- 勇者 → ダメ息子
- 呪文 → 戦車
- ファンタジー世界 → 荒廃した近未来
- 世界を救う → 俺が強くなればどうでもいい
- 導かれし者 → いつでも引退。自由気ままに旅できる
と徹底的に王道の真逆を行く作品に舵を切りました。
ただしストーリーがひねくれているだけで、中身は紛れもなくドラクエだったと宮岡氏は後に述懐しています。
テレビCMは先代のジャイアンであるたてかべ和也氏が担当し、”竜退治はもう飽きた!”とアンチドラクエを感じるような広告に仕上がっていました。
尤も、これは古巣に恩義を感じていた宮岡寛氏は最後まで反対していたそうです。
Jポップアレンジャーの門倉聡氏が手掛ける軽快な楽曲も話題となり、特に賞金首との戦いに流れる「WANTED!(お尋ね者との戦い)」は現在も使われる定番のボスBGMとなりました。
初代はファミコン、続編とリメイクはスーパーファミコンで発売されています。
いずれも好評を博し、ユーザーは3作目への期待を胸に膨らませて発売を待ちわびていたのでした。
発売元データイーストの経営悪化。そして『ワイルドアイズ』の発売中止
ゲーム発売元のデータイーストが経営の多角化に失敗。
手を出した事業は多岐にわたり、確認されているだけでも
- 椎茸の栽培
- ガスマスクの販売
- マイナスイオン発生装置の取り扱い
がありました。
ある意味開発したソフトよりも、データイーストの晩年の方が面白いという状況が続いていたわけです。
この間にメタルマックスは
- メタルマックス3(プレイステーション版。企画のみ)
- メタルマックス HEART OF GOLD
- メタルマックス オーバードライブ
- メタルマックス ワイルドアイズ(ドリームキャスト)
と形を変えながら開発を続けられていたものの、経営が悪化した同社に変わって出版社アスキーが版権を借り受けていました。
しかし外注事業は全てキャンセルとなり、データイーストは2003年に破産宣告を受けています。
2004年には商標の異議申し立ても見つかっており、これからメタルマックスを巡る状況は混沌としていくわけですが
- 商標の更新をしていなかった(あのゲームを追え!掲載)
- 知らない会社に取られた(ファミ通インタビュー)
- 新宿エクスプレス社が宮岡寛氏に返還するために頑張ってくれた(シリーズファン)
と諸説あり、当時の状況は未だに分からないままとなっています。
モリモトナオキ氏による詐欺事件勃発
1998~1999年頃、自身がメタルマックス2を作ったと主張する「モリモトナオキ」なる人物が出現。
投資家に資金提供を呼びかけ始めます。
後の派生作品に「ブック=フォレスト」なる詐欺師が登場しているのですが、これはブック=本、フォレスト=森と見立てている。
すなわち「森本」ということで、ファンからはこの詐欺事件が元ネタになっているのではないかと噂になりました。
それにしても、データイーストがまだ存命していた頃に何故メタルマックスシリーズを狙ったのか…。
もうちょっとメジャーなタイトルを
『メタルマックス2改(壊)』が生まれてしまう
破産前のデータイーストからライセンスを取得。
そして作られた作品が『メタルマックス2改』になります。
ただし、グラフィックやBGMは壊滅的な状態でリリースされ、オリジナル版に泥を塗るような移植となっていました。
ワイルドアイズ販売中止に落ち込んでいたユーザーは更に地獄の底へ叩き落されたのです。
開発を担当したナウプロダクションは旧作にも携わっていたはずなのに、なぜこのような物が生まれてしまったのかは未だに謎のまま。
この騒動を受けて「メタルマックスR改」は品質向上のために発売を延期したのですが、破産管財人から管財人解除権の行使を受けたために開発を中止。
名誉挽回のチャンス到来とはならなかったのです。
『メタルサーガ』が一時的に宙ぶらりんになる
一方、株式会社サクセスもライセンスを受けてメタルマックスシリーズを開発していました。
ところがデータイーストの破産を向かえて商標の所在がうやむやとなってしまいます。
結局、権利を取り戻すことはかなわず、タイトルをメタルサーガと改めることによって発売へとこぎつけました。
発売直前には原作者である宮岡寛氏も合流。
『メタルマックス』『メタルサーガ』とそれぞれ別のシリーズとして共存していくことになります。
『メタルマックス3』がニンテンドーDSで復活。10万本以上の好セールスを記録
カドカワグループが商標を取得したことにより問題は解決。
実に17年ぶりのナンバリングタイトル『メタルマックス3』がエンターブレイン主導で販売されることになります。
「史上最強のLv1」「死にまくりのNPC」と”らしさ”を感じさせながらも、パーティメイキングが自由になるなど、新風を吹き込んだ良作に仕上がっていました。
売上見込み7万本という中で10万本以上のヒットを記録。
即座にメタルマックス2のリメイクが決定します。
その後は良作連発もセールスが振るわない状態が続く
その後も『メタルマックス2リローデッド』『メタルマックス4』と良作が続くのですが、想定していた販売本数をいずれも下回ってしまいます。
ナンバリング4作目に至っては、前衛的なパッケージアートを目にしたユーザーが猛反発。
ゲームが面白い面白くない以前に叩かれるという、過剰なバッシングが続くことになります。
プレイした人からは大絶賛を受けたのですが、叩いていたユーザーが良作と認識を改めることはありませんでした。
これ以降は新作のプロジェクトが白紙となり、シリーズの手綱はエンターブレインから角川ゲームスへと移ることになります。
シリーズ5年ぶりの新作『メタルマックス ゼノ』がリリースされる
メタルマックスは売り上げ不振により新作開発が凍結していました。
しかし、宮岡寛氏が角川ゲームス代表取締役の安田善巳氏を説得。
「まだやりたいことがある」としてシリーズ5年ぶりの新作発売が決定します。
発売中止となったワイルドアイズ以来、本格的にフル3D・RPGに挑戦することになりました。
荒いグラフィック、ストーリーを何周もするような作り、犬や戦車の改造パーツをことごとく切り捨てる。
「メタルマックスをシンプルにそぎ落とす」とは言ったものの、明らかにタイトなスケジュールと予算不足を感じるゲーム内容となっていました。
しかし良い部分も多く、ブラッシュアップした続編さえ出れば何とかなるだろうという希望はあったのです。
翌年に『ゼノリボーン』発表。発売1年でリメイクが告知される
2019年には『ゼノリボーン』『ゼノリボーン2』が発表され、片方は前作ゼノのリメイクであることが告知されます。
ゲームエンジンを一新して、キャラデザは織田non氏から緒賀岳志氏に変更。
個人的にすぐリメイクを出すのはぶっ飛んでていいと思うのですが、1年に2本出せるのか?というスケジューリングの方が心配でした。
案の定、ゼノリボーンは2020年7月に延期。
ようやく販売されるも、良い部分1つにつき悪い部分が2つ出てくるといった内容で、名誉挽回のチャンス到来といった形にはなりませんでした。
不評だった会話シーンを丸ごと削るだけ、ストーリーに大幅なテコ入れをしない。
大事な世界観の説明まで不足するというわけのわからない状態になっています。
ここで『ゼノリボーン2』は2021年に延期。
メタルマックスプロジェクトに暗雲が漂い始めます。
『ゼノリボーン2』は『ワイルドウエスト』に改題。スピンオフ『メタルドッグス』の発表
2021年3月、メタルマックス30周年 生誕祭 生放送にて『ゼノリボーン2』が『ワイルドウエスト』と改題されることが発表。
プレイヤーから意見を寄せられた結果、新作として仕切りなおす方針が示されました。
同じ主人公でリボーン→リボーン2と爆速でリリースして、ユーザーの熱量を上げたかったんじゃないのか…という疑問が頭をよぎり始めます。
愛犬ポチが主人公のスピンオフ作品『メタルドッグス』まで発表。
とりあえず外伝の前に本編を煮詰めてくれる?と釈然としない思いがユーザーの間に広がっていきます。
しかしシリーズが凍結してしまったら悲しいし、メタルドッグスは良作かもしれないという望みがファンを繋ぎとめていました。
2022年4月『メタルドッグス』発売。悪くはないけれども…
管理人が新宿ゲームショウにまで行って応援していたスピンオフ作品『メタルドッグス』がいよいよ発売になりました。
ファン向けのハクスラアクションとしては悪くないけど、新規のユーザーにおすすめできるというほどでもないようなクォリティ。
ストーリーはワイルドウエストに続くという形で締めくくられています。
Steam版は未だに早期アクセスのままで、メタルドッグスとワイルドウエストを同時にやっている場合なのかという疑念も浮かんでいました。
そして運命の2022年6月9日を迎えるわけです。
そして『ワイルドウエスト』発売中止へ。他のプロジェクトはどうなる
というわけで記事の最初に戻る。
6月9日、ゼノリボーン2こと『ワイルドウエスト』の開発中止が決定してしまいました。
また”開発中止”という言葉が引っ掛かって、再開はあるのか、シリーズは続くのか、などなど期待していたユーザーとしては聞きたいことが山ほどあります。
ゼノリボーン2本同時発表辺りから嫌な予感がしてましたが、シリーズ30周年の記念すべきタイミングで開発中止なんて聞きたくなかった…。
構想中の作品には『CODE -0- コードゼロ』という新作もあったそうですが、この分だと立ち消えになりそうな気がしています。
角川ゲームス代表取締役の安田善巳氏が独立
代表取締役の安田善巳氏が、角川ゲームスのIPを一部切り出す形で独立。
『ルートレター』『デモンゲイズ』などのソフトはDragami Gamesに権利が移っています。
KADOKAWAと資本関係はなくなり、株式会社エクストリーム(メサイヤ)の連結子会社となることも発表されました。
メタルマックスは新会社に権利が移行していません。
シリーズ復活は安田善巳氏がゴーサインを出したこともあり、後ろ盾がなくなってしまった可能性があります。
もちろん想像の話でしかないので、独立が関係あるかもぐらいに思っておいてください。
『メタルサーガ ~叛逆ノ狼火~』に全てを託す
あとは分家のメタルサーガに全ての希望を託すしかありません。
Twitter公式アカウントは直接本家の開発中止には触れていないものの、6月15日に新モンスターの情報を公開。
こちらは開発が続いていることをアピールしてくれています。
サーガくん…あとは頼む…!
あとがき
変なのできるぐらいならもう新作はいいから、過去作を現行機で遊べる環境作ってほしい
いいですね
コンプリート版をパッケージ、単品販売はダウンロードなんてやってくれたら全部買っちゃいそうです
プレイステーションに新作を出す前の販促として、過去作の移植からやってくれたら嬉しかったんですけどね…
steamでよりによってゼノリボーンを配信するセンスに驚きます…
>匿名さん
ええ…
まさかの6月10日配信なんですね
ローカライズできてるのがゼノリボーンぐらいだと思うんですが、まずは過去作から移植してほしかった思いがあります
DS版は2画面操作を直す必要があるし…、なんか余計に考えてて悲しくなりますね
『ゼノリボーン2』は『ワイルドアイズ』に改題……?
なんか時空が歪んでる?
>匿名さん
しまった…
やんわりご指摘ありがとうございます
直しておきました
いつか「ワイルド○○」でシリーズ新作を見てみたい気がします
今頃ですが、長年のファンなので思う事を書きます。ワイルドアイズの為にドリキャスを買い、発売当日に権利関係で発売中止となった事は今でも忘れていない。今回も相当待った挙句開発中止になりファンは再び裏切られた。
ゼノリボーンの反応が悪く、ゼロベースで開発をやり直しコストが嵩み回収が難しくなるというのは、もはや通用しないゲームを作り売ろうとしている事にいい加減気付かなければならない。
メタルマックスはメタルマックスであり、それ以外を作ろうとするならそれはもはやメタルマックスではないと思う。何か要素を付け足そうとし、全く違う事をやるのならそれはメタルマックス自体が現代に通用しないという事でしょう。これ以上、ファンを傷付ける事のないよう静かに幕を下ろすべきだと思ってます。長年のファンとしては。
>MM終了さん
すみません
なぜかスパム判定されていたので、急遽サルベージして返信しております
ドリームキャストの頃から本体を揃えて発売を待っていたのですね
それは今回の事態で怒りが再び蘇ってきたこととお察しいたします
>コストが嵩み回収が難しくなるというのは
さすが鋭い指摘で、メタルマックスが2Dから3Dスタイル(広大なフィールド)に移行するたびに開発難航してますよね…
>メタルマックスはメタルマックスであり
2のシナリオとか、初代のどこにでもいけるスタイルは面白いですよね
ファンの方に怒られてしまうかもしれませんが、今は戦車を使った新しいRPGのスタイルを見てみたいとは思っております
個人としてはDS版のメタルマックスで再び夢を見てしまったので、シリーズの最期まで付き合う予定です
笑ってやってください
熱いレスありがとうございました