ゲーム&トロコン概要 | |
プラチナ達成時間 | 約10分(まともにプレイすると約2時間) |
値段 | |
難易度 | 1 / 5段階中 |
時限要素 | なし |
備考 | サスペンス |
PSストアリンク | マリンエクスプレス殺人事件 |
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- Index -
ミステリ△、ひねりの効いた文章〇『マリンエクスプレス殺人事件』(THE MYSTERIES OF RANKO TOGAWA: MURDER ON THE MARINE EXPRESS)概要
本作はスペインのメーカーである1564 Studio開発、レイニーフロッグ販売のレトロ風ADVです。
海底を走る列車マリンエクスプレス号を舞台にした、クローズドサークルのミステリーノベルですね。
女子高、聖ヨアキム・アカデミーの一行が、アメリカから日本までをつなぐ海底列車「マリンエクスプレス」の第1号運行に乗ることとなった。
しかし、そんなのどかな旅行が悪夢へと変わってしまう。
なんと教師の1人が部屋で死んでいるのが見つかったのだ。
学校で一番の人気を誇り、生徒に慕われていた先生を殺したのは一体誰なのだろうか?
主人公・東川乱子は友人のアストリッドと共に事件の解決へ向けて乗り出す。
てっきりファミコン風のADVが楽しめると思いきや、本作は最初から最後まで文章を読み続けるだけの作品でした。
途中には選択肢も推理パートも何も存在してません。
いかにも「見る」「調べる」「移動」なんて選べそう画面なんですけど、本当に操作できる部分が何もないんです。
唯一、LINE風のアプリにメッセージが送られてくるだけで、あとは最初から最後まで×ボタンを押すだけのゲームになってます。
一応「ミステリノベル」とは銘打っている作品なのですが、アリバイとか殺害トリックなんていうのも曖昧なので、どちらかというと「2時間のサスペンスドラマ」と考えるのが妥当なんじゃないでしょうか。
例えば探偵役の人がいろいろ証拠を提示してくれるんですけど、あろうことかプレイヤー側には後出しジャンケンなんですよね。
解決編前にヒントは全て出しておいてくれよ、と。
他にも「登場人物のひとりが忍者」という設定なので、そりゃ暗殺から盗みまで何でもできるよねとか、そもそも生徒50人分のアリバイはどうしたとか、なぜ一番怪しい人物を問い詰めないのか(結局は真犯人)とか、細かい部分を挙げていくとミステリとして破綻していることが分かります。
一方、文章自体は日本のネットミームも交えつつ十分に楽しませてくれるので、細かいこと考えなければ十分に楽しめるものに仕上がっていますね。
「ワイ、面白ければ何でもいいよ」という人ならば問題なく楽しめるでしょう。
あと値段が安いのでしょうがないと思いますが、バックログを確認する動作が異常に重い点だけはなんとかして欲しいところですね。
ちなみにトロフィーリストは最初からネタバレ全開となっているので、確認する際は十分に注意してください。
本作『マリンエクスプレス殺人事件』はPS5、PS4、Switch、XboxOne、Steamにて配信中。
PS5 & PS4のクロスバイ対応作品。
トロフィーのリージョンは北米、欧州、日本と分かれています。
操作説明
ボタン配置【PS5】 | |
Lスティック | ポインターの移動 |
○ボタン | キャンセル |
×ボタン | 決定、読み進める |
R1ボタン | 既読スキップ |
OPTIONSボタン | ポーズ |
十字キーでは画面が反応しないため、Lスティックでマウスを操るようにカーソルを移動させてください。
事前知識
×
ボタン連打で読み進めるだけでトロコンできます。
ストーリーの進行状況に合わせてスマホにメッセージが送られてきますが、確認しなくてもトロフィーが全て獲得できる仕様になってます。
ひとつ、注意点として未読スキップが搭載されていない点が挙げられます。
PS5版は普通に読み進めて楽しみ、PS4版は自動連射コントローラで放置しておくとよいでしょう。
ゲームプレイ時の注意点など
ゲームスタート。
この画面では十字キーの入力を受け付けてくれないため、Lスティックで「チャプター選択」を選ぶ必要があります。
以降もアイコンを選択するときはスティック操作でプレイするようにしてください。
普通に読み進めて約2時間ほど、×ボタン連打では約10分ほどでトロコン出来るようになってます。
ゲームの内容紹介と元ネタに関するツッコミなど(ネタバレ注意)
本作を製作したのはスペインのメーカーです。
ゲームタイトルの「マリンエクスプレス」とは、手塚治虫が24時間テレビで放送したアニメ「海底超特急 マリン・エクスプレス」が元ネタでしょう。
ほとんどゲーム中では海底列車であることを活かした描写がないので、単に元ネタに合わせて無理やり海底を走る設定にしただけかと思われます。
ちなみに過去にはファミコンで「西村京太郎 スーパーエクスプレス殺人事件」なるソフトも発売されてますが、そちらは関係あるようでないでしょう。
元々レトロADVは2時間ドラマをテーマに作られていた作品も多いですしね。
ゲームスタートと同時にトロフィー「カリフォルニア発4時50分」獲得。
これはアガサクリスティーの小説「パディントン発4時50分」からのパロディです。
犯人の動機がわからずに第2、第3の殺人が起こってしまう展開は今回のゲームと同じ筋書きでしょうか。
ネタが豊富に仕込まれているというゲームもあってか、最初に出てくる「トイレの女王様」もトイレの神様が元ネタなんじゃないか、それともアガサクリスティの「ミステリーの女王」を引用しているとか、無駄に構えてしまうところが恐ろしい作品ですね…。
ストーリー開始時点の会話シーンより。
主人公の東川乱子とはもちろん推理小説家「江戸川乱歩」のパロディです。
そしてヒロインのアストリッドとは、フランスのドラマ「アストリッドとラファエル 文書係の事件録」からの引用である可能性が高いでしょう。
ただしあちらは有能な自閉症の文書係であることに対して、こちらのアストリッドはびっくりするぐらい何にもしてくれません。
「列車の乗客は全員ブルーミンが大好き」との設定がありますが、これはピンバッジの形状から見てもフィンランドの漫画「ムーミン」が元ネタでしょうね。
ただし一部ファミリーの設定は絵本「バーバパパ」からの拝借も見られます。
この辺は単なるパロディに終わらず、犯人を追い詰める際の重大な手掛かりになるので油断できないところ。
ちなみに埼玉近郊に住んでいる人であればムーミンバレーパークへ行くことをおすすめしておきます。
自然が多くてお土産もおしゃれですし、すっごい癒されますよ。
イケメンで皆から人気があるローレンス先生と、恋愛の噂がある生徒アイリーン。
この2人の与太話から今回の殺人事件が発生するわけですが、のちのち発生するNot all menの問題も含めて、レトロ風ゲームの割に扱っているテーマは現代っぽさがありますね。
「サンゴ作るンゴ」
さすがに原作のスペイン版ではそんな表記はないと思うんですが、この日本オタクの知識量からすると翻訳家に指示してそうな気がしないでもなく。
ホログラムのバンド「カイガラーズ」のコンサート。
多分、元ネタはスプラトゥーンの「シオカラーズ」だと思いますが、あとあと会話内容に出てくるユニットの設定ではむしろサザンオールスターズに近いという。
そして1つ目の殺人事件が発生したあとにトロフィー「マリン急行の殺人」獲得。
これはアガサクリスティーの小説「オリエント急行の殺人」からの引用ですね。
翻訳家はいちいち元ネタを拾って日本語化するのが大変だったかと思います。
次のトロフィーの「二匹の盲目のネズミ」とは、アガサ・クリスティの小説「三匹の盲目のねずみ」からの引用でしょう。
これで実績の名前は全て同作家から使われていることが確定しました。
最初の殺人事件の発生後、皆は部活(スポーツ)をやっているのかというテーマにおいての発言。
主人公の乱子は「面!胴!小手!」と叫びながら、その他の生徒と呼吸を合わせることを覚えます。
つまり、チャットの1行目「小林節子」というのは、おそらく史上二人目の剣道七段有段者で現在も存命の女性剣士のことでしょう。
ようシナリオライターはスペインにいながらこんなこと知ってるなっていう…。
2件目の殺人事件が発生してトロフィー「鏡は縦にひび割れて」を獲得。
これはもちろんアガサクリスティ著「鏡は横にひび割れて」のパロディですね。
殺人事件発生直後のグループチャットから。
香港の女優であるミシェル・ヨーが主演した「レディ・ハード 香港大捜査線」が話題にあがってますが、なぜか偽名ではなく堂々と実名が表示されています。
これは大丈夫なんだろうか。
そして、ケンカを見かねた別のユーザーが仲裁に入ってくれるという展開が訪れます。
そして唐突に放り込まれる「大島ゆかり」なる人物。
これはアジア各地で活躍したアクション女優”シンシア・ラスター”の日本名ですね。
もはや日本人でも馴染みのないネタをぶち込んでくるようになりました。
そしてランコが車内の情報を収集しているうちに、アラブの女性忍者ハイファなる人物が出現。
どうやら日本のオタクらしく、ランコと様々なネタを繰り広げていくことになります。
「忍者…。アラブにあのような格好いいヒーローはいない」
「服部半蔵。猿飛佐助。白土三平…」
「最後のは漫画家だろ!」
流れるようなボケが美しい、今作一番のサブカルネタが炸裂している瞬間です。
シナリオライターはスペイン人にしておくのが勿体ないぐらいの秀逸なギャグシーンでありました。
サウジアラビアでは「SURIMI」が流行っているというお話。
これは週刊少年ジャンプに連載していた忍者漫画「NARUTO」のことですね。
ちなみにアラブ圏で日本の作品が人気との話は本当で、サウジアラビアの国民的イベント「ジェッダシーズン」ではアニメビレッジなるイベントも開催中です。
他にも「ユーリ!!! on ICE」とか、フィギュアスケートのロシア代表メドベージェワ選手が同作ファンである話が出てきます。
だんだん実名を使っていい部分とそうでない部分の境目がわかんなくなってきましたね。
「日本人なのにNARUTOみてないの!?」
「今すぐ人生やり直してこい!」
言いそう、すごいオタクが言いそう。
そうこうしているうちに殺人事件を聞きつけて、列車の車掌である「ウィリアム・メイク」さんが登場。
これはイギリスの小説家「ウィリアム・メイクピース・サッカレー」からの引用でしょう。
もはやこれだけネタを考えるのは疲れるんじゃないですかね、とか余計な心配をしないわけでもなく。
車掌が現れたあとに行われるグループチャットでは「タウマタファカタンギハンガコアウアウオタマテアポカイフェヌアキタナタフ」と実在の地名を出しながら、現在通過している場所の説明がされることになります。
あのさぁ…。
ここでシャーロックホームズの名言「全ての不可能を消去して、最後に残ったものが如何に奇妙な事であっても、それが真実となる」を引用して解答パートに移るのですが、なぜかスパイクが違うセリフで応答することなります。
いや、それ、酒飲みゲー『VA-11 Hall-A ヴァルハラ』のネタだから。
最後は主人公二人で現場検証していると、列車エンジニアのグレースが入ってきて即座に隠れることになります。
ここでトロフィー「トイレとの約束」を獲得。
これはもちろんアガサクリスティ著「死との約束」からの引用ですね。
そういえば過去にフジテレビで三谷幸喜がドラマ化していたことを思い出しました。
ちなみにこのあとはスペインのゲームらしく現地のオリピアンがたくさんでてきますが、さすがに全部取り上げるとキリがないのでそこは省略させていただきます。
ちょっとテレビ番組「YOUは何しに日本へ」のネタが混じっていたような気がしないでもないですが…。
第3の殺人事件が発生する直前のシーンにてトロフィー「猫たちのなかの鳩」獲得。
これはミステリーの女王アガサ・クリスティ著の「鳩のなかの猫」より拝借。
「ゲーオタじゃないから」と言いつつ、おすすめの動画は?と聞かれて「梅原大吾の背水の逆転劇」と答えるTECHNOGIRL96。
ここはしっかり”背水の逆転劇”と訳せている翻訳家が有能というところでしょうか。
元ネタが分からずに適当な邦訳をつけている洋ゲーも多いですからね。
女性忍者ハイファの訓練がはじまり、なかなか車内を自由に通してくれないという場面。
「赤いものを3倍のスピードで投げた」と言ったところ、ランコが過剰に反応してしまうシーンです。
画像の「フリーダムファイター ガンボーイ」とは、機動戦士ガンダムの企画段階での仮タイトルですね。
お前…本当に17歳か…とユーザーから総ツッコミが入ること請け合いの場面でしょう。
原作者は多分、今頃こうやって日本でウケていることで喜んでいる気がします。
ランコが語る「義を見てせざるは勇無きなり(Neither seek nor shun the fight)」なる格言。
これは話の流れから考えて「例え身内が犯人であっても警察に突きつける。見て見ぬふりなどしない」という意味ですね。
これはことわざというよりも論語なので、どちらかと言えば中国が元ネタでしょう。
最近は同じ言葉がSwitchのRPG「ゼノブレイド3」にも使われましたが、発売時期から考えてそちらからの引用ということはなさそうです。
ハイファと会話直後にトロフィー「そして三つの死体があった」を獲得。
ここは初めてアガサ・クリスティではなく、イギリスのプログレッシブ・ロックバンド「ジェネシス」がリリースしたアルバム名からの引用となります。
いよいよ物語も終盤にきて流れが変わったかと思いきや、その音楽バンドがもともとアガサ著「そして誰もいなくなった」を元ネタとしているというオチですね。
原作は短時間で読めてとても秀逸なミステリーにまとまっているので、まだ未読の人はぜひ一度読むことをおすすめしておきます。
推理パートに入る直前のグループチャットのやり取りにて。
一見すると定番のネットミームである「犯人はヤス!」に目がいきがちなんですが、これは完全なミスリードですね。
会話している二人の名前がA子とB子、そして「かしらかしら?ご存じかしら?」のフレーズから察するに、これは影絵少女こと「少女革命ウテナ」のネタをフィーチャーして欲しいのでしょう。
今回の殺人事件にはフェミニズムのような切り口で描かれている場面もありますし、LGBT受けのよい幾原邦彦監督(イクニ)の作品を持ってきたのは果たして偶然か…という部分もありますね。
最後にシナリオライターがプレイヤーに向けて語りかけてくるシーン。
これは刑事コロンボや警部補・古畑任三郎のような倒叙式ミステリを思わせるイベントでした。
ただ残念ながら、本作には提示している証拠やトリックが不足しており、ミステリ風のサスペンスドラマになってしまってます。
事前の「王道ミステリ」という宣伝文句からは程遠い作品でした。
プライバシーの問題とか言って監視システムを排除してるのも制作側にとって都合がよすぎますし。
そもそも消火器のくだりは完全な後出しジャンケンなんですが、操作パートがあればその部分も補えたのに、なんだか勿体ないと感じてしまいますね。
他にも女性が消火器をへこませるほど強い力で殴るか?とか、刃物をもってる人間をわざわざ素手で襲うか?とか、その辺も突っ込み始めるとキリがないです。
そもそも明らかに真犯人と予測がつく人物を誰も問い詰めないので、展開はともかく加害者を特定できなかった人はいないでしょう。
ただ、いろいろ言いましたけど、本作のシナリオライターが何より一番そのことを分かっていると感じがします。
単に宣伝文句が違っただけですし、何よりこの突っ込みこそが蛇足だともいえます。
本当にお話は面白かったので、ワンコインでこのクォリティならば素晴らしいといえる作品でしょう。
最後は犯人を明らかにして、生き残ったメンバーの話を聞いていくというエンディングでトロフィー「シェパード殺し」を獲得。
これはアガサ著「アクロイド殺し」のパロディです。
最後の最後、スタッフロールにまでネタを仕込んでいくスタイルには感心せざるを得ないですね。
本作の邦訳は海外における日本の小ネタを正しく翻訳してくれるメーカー「SIDE QUEST」が担当しているそうです。
今回の作品を楽しめたのも同社の働きがあってこそ、ですね。
今後、他の海外メーカーに向けてのいいデモ作品になったのではないでしょうか。
捜査は容易だ(全てのトロフィーを取得した)
あとがき
ワンコインでミステリが楽しめる…と思ったら、また別の方向性の作品でした。
単純に物語を楽しむにはちょうどいいゲームなので、今回紹介したネタ以外も探しながらプレイしてみてはいかがでしょうか。
昔、コマーシャルでアクション映画だと思わせる作品を見に行ったら、ぜんぜんアクションじゃなかったのでがっかりした記憶があります。
本作も本格ミステリのような宣伝文句は止めてほしいところ。
ストーリー的には十分に良作ですしね。
確かにADVではなかったですけど、ストーリーは面白かったので続編が出て欲しいです。
かなめさんの元ネタ解説もとても参考になりました。
>クロサキさん
感想嬉しいです
こちらこそありがとうございます
やっぱり1本道は残念だけどストーリーは面白かった、というところに落ち着きますよね
ネタを仕込む人は突っ込むと喜んでくれる気がするので、ちょっと時間をかけて記事を作るようにしています
ps5版のコンプはps4があるなら両方起動してps4からリモートプレイで操作して連コン放置で最速みたいですよ。
>radikopremium802さん
なるほど、2機種にわたって最速タイムが狙える…ということですね
トロフィーのリーダーボードは1秒差で凄まじいタイムアタックが行われてそうな気がします